●アンケートの目的と研究

2004年の新潟県中越地震や一昨年の東日本大震災において、「道の駅」が被災者支援や復興支援に大きく貢献しました。また、毎年発生する台風や大雨、冬期の暴風雪においても、「道の駅」が避難者の受け入れなどに貢献しています。これらのことから道の駅には、これまでの「休憩機能」、「情報発信機能」、「地域の連携機能」に加え、最近は「災害時の防災機能向上」への期待が高まっています。そのため、国土交通省においても、一部の道の駅について「防災拠点化」を進めています。

 

一方、道路利用者の休憩施設や地域との交流施設である「道の駅」の防災機能を高めるにはいくつかの課題があります。例えば、防災拠点化の有無に関わらず人々が避難してくること、防災機能を高めたために道の駅の平時の機能や魅力を損ねてしまう可能性があることなどがあげられます。

このことから寒地土木研究所では、「道の駅の防災機能」について、平時の機能向上が防災機能と両立・相乗効果を与える向上手法の提案を目指して研究を進めています。

 

この研究の一環として、道の駅の防災機能について一般の道路利用者がどのように考えているかを把握し、防災機能向上策の検討の参考とする目的で、Webアンケートを行いました。

なお本集計は、全設問の中から主なものを抜粋したものです。本アンケートに協力いただいた方の中で調査結果を希望された方には、全ての質問の集計結果をお知らせしています。

 

※防災拠点化


道路管理者(国や都道府県)と地方自治体が協同して、災害対策用の資機材や食料の備蓄などのハード整備のほか、防災計画への反映や災害訓練などのソフト対策などを行うこと。被災者支援の拠点など災害時における活動の拠点となるような整備を行うことなど。

 

※研究の詳細については次のホームページを参考にしてください。


 

●Webアンケートの概要

調査方法:

北海道の道路情報総合案内サイト「北の道ナビ」にてアンケートを実施

調査期間:

平成25年3月29日(金)~8月30日(金)

対象者:

・一般の道路利用者(道の駅への避難未経験者)
・これまでに何らかの災害により道の駅に避難した経験がある方

回答者数:

・実際に道の駅への避難を経験していない方:200名
・実際に道の駅への避難を経験している方:28名

回答者の属性:

・男性:186名
・女性:40名
・道内在住:188名
・道外在住:38名


※3月29日以前もアンケートを実施していましたが、設問の文言を一部修正したため、修正以前の回答は含まれていません。

※回答には、未記入や無回答が含まれているため、有効回答数と一致していない場合があります。

※自由回答の文章については、わかりやすいように一部表現を修正させて頂きました。

※本調査結果及び集計資料に関する全ての著作権は(独)土木研究所寒地土木研究所に帰属します。そのため、掲載しているグラフなどの一切の無断転載を禁じます。

※本調査結果及び集計資料の内容を、ご使用になりたい場合は(独)土木研究所寒地土木研究所地域景観ユニットまで連絡ください。ご利用の際には「例:(独)土木研究所寒地土木研究所作成資料より」などの表示をお願いします。

 

●Webアンケートの結果(抜粋)について

1.被災時の避難場所について

(質問内容)

自分の住んでいる場所から遠く離れた場所で、車を運転中に災害が発生した場合、まずどこに避難しようと思い浮かべますか?

 

(結果)

「道の駅」への避難経験の有無にかかわらず、車を運転中に災害が発生した場合、「道の駅」「コンビニエンス・ストア(以下、コンビニ)」「公共の大型施設」への避難を考えることがわかりました。

その理由として、「公共施設だから」「車で立ち寄ることができる施設だから」などが挙げられ、次に「駐車場があるから」「トイレがあるから」との回答を得ました。

また、避難経験のない方では「コンビニ」との回答が多くありましたが、実際の避難経験者では「道の駅」「コンビニ」の約2倍となりました。これは、実際に避難することになった場合、道の駅がドライブ途中での立ち寄り施設として整備された「公共施設」であることや、道路や災害の情報を求めていたため(2の回答より)と考えられます。

 

 

被災時に、まず避難しようと思った場所

 

 

2.道の駅避難時に求められる支援について

(質問内容)

道の駅に避難しているとき、どのような利用や支援を求めますか?(※避難の経験がない方)
道の駅に避難しているとき、どのような利用や支援を求めましたか?(※避難経験者)

 

(結果)(複数回答のうち1位のみグラフに掲載)

避難の経験がない方は、避難時には「災害情報」が最も必要と考える方が一番多く、次いで「道路情報」「トイレ」「食事の提供」を一番に挙げた方が多くいました。また、2位以降は、「道路情報」「トイレ」とされました。

一方、実際の避難経験者は「災害情報」と同じくらい「道路情報」が最も必要と回答し、次いで「トイレ」「駐車場」とされました。また、避難の経験がない方が求めるとしていた「食事や飲み物の提供」は、優先順位が比較的低く、避難経験者は特別に必要とはしていませんでした。

これらのことから、実際の災害時には、災害情報とともに周辺の道路が通行できるのかどうかなどの「道路情報」も大変重要であることがわかります。

 

 

避難時に求めた支援

 

また、避難経験者の自由回答では、「公的機関との連絡が最優先で取れること」「災害情報や交通網の情報提供の充実」などの情報提供の充実に関するものや、「有料でも携帯電話の充電ができること」「災害時電話の利用」「無人(夜間)の場合直通電話の設置」など携帯電話の利用や公衆電話の設置などの意見が寄せられました。

 

 

3.避難時のサービスに対する支払い意志について

(質問内容)

支払い能力があり、道の駅から食事やお風呂などのサービスが提供される場合、必要な料金についてどう思いますか?

 

(結果)

避難時の費用負担について、避難経験の有無に関わらず費用負担について理解があることがわかりました。特に避難経験者については、「通常よりも高い料金」の支払いでも良いという回答が最も多く、実際の災害経験を通じて、避難を経験されていない方よりも支払い意志が高くなったと考えられます。

また、これまでの調査から、災害時に道の駅の商品を無料で提供したために道の駅の経済的負担が大きかった事例があったことから、今後は支払い能力のある避難者に対して有料での対応も検討する必要があるといえます。

 

 

避難時の支払い意志

 

 

4.道の駅の防災拠点化の必要性について

(質問内容)

一般的に考えて、道の駅の防災拠点化はどの程度必要だと思いますか?
(実際に道の駅で出来るかどうかにかかわらず、一般論としてお答えください。)

 

(結果)

「道の駅」への避難経験の有無にかかわらず、「防災拠点化」には6割、「防災機能の向上」も含めると9割以上の方が必要と回答しました。

避難を経験された方だけではなく、経験していない方も、防災拠点化もしくは防災機能の向上は必要であることと考えられているようです。

 

 

 

防災拠点化の必要性

 

 

5.道の駅の防災拠点化を進める場合の必要な範囲について

(質問内容)

防災拠点化する場合、どの程度必要とお考えか教えてください。

 

(結果)

避難の経験がない方は、「すべての道の駅を防災拠点化した方が良い」との回答が約4割と一番多く、次に「地理的条件など必要な箇所のみ・・」とした方が約3割となりましたが、避難を経験した方は、経験がない方と同様に「すべての道の駅を防災拠点化した方が良い」とした方が一番多く約4割、次いで「一定間隔(割合)で防災拠点化した方が良い」とした方が多くなりました。

これは、実際に道の駅に避難した経験が影響しているといえます。

 

 

防災拠点化の必要な範囲

 

 

6.道の駅の防災拠点化時の必要な配慮について

(質問内容)

道の駅を防災拠点化する場合、どのような配慮が必要だと思いますか?

 

(結果)

「道の駅」への避難経験の有無にかかわらず、防災拠点化を進める場合には、「道の駅の利便性や快適性を優先しつつ、防災機能は可能な範囲で向上させるのが良い」との回答が約6割を占めました。

避難を経験した方も、道の駅の利便性や快適性を優先する必要があると回答しており、平時の機能や魅力の低下に繋がらないような防災機能の向上策が求められているといえます。

 

 

防災拠点化時の必要な配慮

 

●まとめと今後について

アンケート結果から、道の駅への避難の経験がない方とある方の両方とも、普段の利便性や快適性を優先させながら、道の駅の防災拠点化や防災機能の向上を進めた方が良いと考えていることがわかりました。しかし、避難した経験から、防災拠点化を進める場合の必要なエリアや、必要とされる情報内容、避難時におけるサービスへの支払い意志などに違いがみられました。

今後はこれらの調査結果も踏まえて、どのような防災対策が必要かを把握した上で、平時の機能や魅力への配慮と防災機能の向上とが両立・相乗効果を与える手法の提案を目指して研究を進めていきます。